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saburotakizawa

希望の物語

先日のケア・インターナショナル・ジャパンのウクライナ支援オンラインイベントのゲストは、ウクライナから昨年の春に日本に避難して来たソフィアさん。

 ウクライナの名門医科大学の3年生だった。日本でもそうだが、ウクライナで医師になることは社会的にも経済的にも安定し、人生が見通せる。ソフィアさんには「希望の物語」があった。

 ロシアの仕掛けた戦争はその将来の夢を打ち砕いた。昨年5月の移民政策学会で話をしてもらった時、「将来の希望は?」と問われて彼女は「I live now ...私は今を生きるだけ」と答えた。「希望の物語」は消えた。絶望と混乱の中で希望など持ちようがなかったのだ。それでも自分の生きる意味を問い直し、助けてくれた日本へのお返しもしたいと言っていた。

 あれからまもなく一年、ソフィアさんは日本語学校で勉強しながら、大学進学の夢を語ってくれた。とても賢明な彼女を欲しがる大学も出てくるだろう。

 彼女は「希望」を語ってくれた。ただ、言葉の持つ明るいイメージとは違って、彼女(たち)の「希望」は切なさを伴う。戦争が続き、ウクライナの国民も国家も先のことは分からない。確実なものは何一つなく、不安と焦燥の中で人々は生きる。日本に避難した人々も、先が見えない。言葉、お金、仕事、子供の教育、ウクライナに残した夫や父親の安否...。日本での法的な地位すら不安定だ。

 そんな時、人々はいつかこの戦争は終わる、ウクライナは勝つ、昔の平和な生活が戻って来る、という希望を持つ、というより希望にすがる。その希望が満たされるかは誰にも分からない。ただ、不安の先に「希望の物語」があると信じるとき、それは逆境を乗り越える力になる。その力が希望を現実のものにするのだ。

 ウクライナの人々が今までロシアの侵略に持ちこたえたのも、皆が希望の実現を信じたからではないか。

 世界中の多くの難民が、すべてを失うなかで希望だけを頼りに生きている。そんな難民・避難民難民の心の強さは、僕らのように「平和」な国に住む人々にインスピレーションを与える。

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