2年以上に亘って議論された入管法の改正は決着がついた。今日の参院本会議で立憲民主党が提出した法務委員長「解任決議案」は60対181で否決された。来週6日(火)の委員会で法案採決がなされ、7日(水)の本会議で可決成立となる見込み。そして半年後から施行される。
過去10年近い難民認定制度改革の集大成ともいうべきこの改正法は、今後10年、20年の入管・難民認定制度とその運用のあり方を規定する。先進国の多くが難民を排除する政策を採る中で、日本は「難民開国」に向かう。「難民認定の手引き」の公表や「補完的保護」を創設するなど日本における「難民の保護スペース」を拡大する。これは「日本は他の国の難民保護にタダ乗りしている」という言説に対抗するものだ。
改正法は同時に、国民の不安を呼んだ凶悪犯罪者による難民認定制度濫用などを防止するため「送還停止効」に例外を設ける。それは濫用者による難民制度への「タダ乗り」を認めないということだ。
これらは「規律ある人道主義」の実践であり、それは国境管理(不法入国・在留防止)と難民保護の両立に苦しむ欧米諸国に一つのヒントを与える。
日本の入国管理と難民制度にこれほどの注目が集まったのは初めてだ。長い国会審議を通して、今後、入管庁が改善すべきことが多く出てきた。補完的保護の運用、参与員制度の改善、出身国情報体制の向上など、2014年の専門部会提言を超える改革が求められる。
入管庁は政策官庁になるべきだが、そのためにはまず何よりもデータの蓄積、分析と国民に対する積極的な情報公開、説明責任の確立が必要だ。今までのように、ほとんど注目されなかった組織とは違う。国内外で留学している若手職員に期待したい。
他方で、支援団体の「改悪反対」運動は効果的でなかった。難民保護の本質は政治的動員にあるから、難民保護についてのステークホルダーは誰か、彼らの関心や利益は何か、彼らの保護に向けた政治的意思を醸成する手段には何があるか、そして政治には避けられない妥協、「落としどころ」は何か、と頭を絞るべきだったが、それができなかった。「暖かい心」があっても「冷静な頭」がなかった。一部の過激な弁護士に引きずられたデモ中心の「改悪反対」「廃案一択」運動は完全に失敗し、失望と無力感だけを残した。もともと一枚岩でなかった支援運動は分裂するだろう。
立憲民主党は、2年前の法改正審議の時に「幻の修正合意」とも呼ばれた与党からの大幅な譲歩の入った修正案を蹴った。今回も「与党はそこまで譲歩したか」と思えるような衆院での与野党修正合意から離脱した。党内の一部左派強硬派に引きずられ、何一つ実績を残せず国政政党としての能力に疑問符が付いた立憲民主党は、次回の総選挙で、今回の法改正で現実的な対応をした維新に第一党の地位を奪われるだろう。その前に党が分裂するかもしれないが。
報道機関というよりは、一部支援団体の宣伝機関かと思えるような一方的な「報道」を繰り返した一部メディア(の一部記者)は、2年前はウイシュマ事件一色の報道、最近では柳瀬氏など国会参考人に対する個人攻撃に力を貸すなど全く見識がないが、今後どのように論調を変えていくか?たぶん入管問題には触れなくなるだろう。
以上のような最近の日本の動きには国際的な注目も集まる。今月中旬にワシントンを訪れ、学会で報告したり、政府関係者や研究者に会って背景説明をすることになっている。
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