昨晩に出演したミャンマー情勢を巡る「深層ニュース」は明日から1週間ほどネットで視聴できるらしい。
今朝の読売新聞の短信にある「国軍の勝利」という意味はこうだ。アセアンはクーデターで実権を握った国軍総司令官を会議に招いたが、NLD政権の閣僚などを含むNUG(ミャンマー統一政府)は招かなかった。それだけで国軍は有利な立場を得た。自分たちの言い分だけを一方的に宣伝できるからだ。
加えて、国軍はすでにアセアン側からの5つの要求を「国内が安定し、条件が整うまで」実施しない意向を示している。今後アセアンはそれらの要求の実行を巡って国軍と交渉をせざるを得ない。交渉が長引けば長引くほど、国軍はアセアンと対等の立場で交渉を続け、国軍がミャンマーの代表だとのイメージを強めることができる。アセアンが対立する当事者のNUG関係者を招かなかったのは不公平で、失敗だった。国軍は大半の要求に応えないだろう。混乱は長引く。
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その中で、番組最後の「日本は何をすべきか」について、与えられた20秒では詳しくは説明できなかったが、一つ、日本はミャンマーからの難民の受入れを積極的にすべきだ。今回の国軍の弾圧を逃れて国外に脱出する民主活動家の一部が日本に来るかもしれない。彼らはどう見ても難民条約に言う「難民」になるだろう。入管庁は、難民申請があった場合には速やかに認定をすべきだ。
同じことはすでに日本にいるミャンマー難民申請者についてもいえる。客観情勢は激変しており、彼らが帰国・帰郷をした場合、拘束や拷問、さらに命の危険にさらされる蓋然性は高い。在日ミャンマー人で支援活動を始めた者はいわゆる「後発難民」に当たろう。入管庁は既存の申請の見直しを進めるべきだろう。
「木が成長するには雑草を取り除き、害虫は駆除せねばならない」と国軍報道官が公言し、けが人を生きたまま火の中に放り込む、頭を狙って撃ち殺す、など、今回のミャンマー国軍の蛮行は(都市部の)ミャンマー国民を驚かせ恐怖を与えている。日本人にとっては理解も信じることもできないことだろう。「なぜ国軍はあんな残虐な行動をとるの?」という問いがそれを示す。
しかし北部カチン州や東部カレン州、西部のラカイン州などミャンマー周辺部の少数民族にとっては、国軍の蛮行はなんら新しいことではなく、驚くことでもない。国軍は少数民族に対して、今、都市部でやっているような残虐行為を半世紀以上も続けてきた。1988年にはヤンゴンで3000人前後を殺したが、2017年には西部ラカイン州のロヒンギャ8000人以上を虐殺している。
だからこそ、世界にはミャンマー難民が(ロヒンギャ難民を含め)110万人もいるのだ。国軍は、今まで周辺州で人目につかないままやってきたことを都市部で繰り返しているに過ぎない。国軍の特異体質は不変だ。今まで国軍による少数民族への迫害を他人ごとのように感じていたミャンマー都市部の人々も、自分たちが襲われる中で国軍の本質的暴力性を認識し始めた。
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日本で難民申請をするミャンマー人(特にカチン族など)が認定を得るのは極めて厳しい。その大きな理由が、国軍による周辺州での迫害の実態が日本では知られず、入管庁も迫害状況を把握していない(できない)からだろう。出身国情報につき入管庁は外務省に多くを頼るが、例えば内戦の続く北部カチン州の州都ミッチーナ周辺に、ヤンゴンの日本大使館員は年に何度ぐらい足を運ぶのだろう?難民の多くが東部紛争地域から流出するが、そこにある国内避難民キャンプに大使館員は一度でも足を運んだことはあるだろうか?
国軍による村落の破壊、略奪、誘拐、レイプ、拷問、処刑..「そんなことはあり得ない、信じられない、あなたはウソをついてるのだろう」と「日本の常識」で判断し、「迫害の恐れなし」として帰国を迫ったこなかっただろうか?だからこそ、ミャンマー難民申請者の認定率も、他の先進国に比べてごく低かったのではないか?
今回の事態で、ミャンマーにおける国軍による長年の残酷な迫害の実態が日本でも知られ、より多くのミャンマー難民が日本により救われることを期待したい。
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