難民認定制度の改革が進むか?
昨日は第7次出入国管理政策懇談会が開催された。コロナのせいで、マイクロソフトのTeamsによるオンライン会議だったが、特に問題はなかった。
今回の中心議題は「収用・送還に関する専門部会」の報告のとりまとめ。メディアでは、強制退去を命じられたにもかかわらず日本からの退去を拒否し長期収容される外国人の処遇ばかりが報道されるが、実は関連した難民認定制度について重要な進展が報告された。
国際的にも批判の多い難民認定制度の改革については、2014年の12月に「難民認定制度に関する専門部会」(僕も委員の一人)が以下の4つの提言をしたが、今回はそれぞれについて進捗(検討)状況が報告された。
① 「保護対象の明確化による的確な庇護」の提言に関しては、女性に対する暴力、LGBT、非国家主体による迫害など「新しい形態の迫害」を明示する方向で検討中。これは、1951年に作られた難民条約では想定されていなかった迫害の出現を受け、UNHCRのガイドラインやEUなどの対応に倣うもので、大きな進展だ。
また、シリアのような紛争国からの難民申請者(紛争難民)につき、難民と認められなかった場合でも、今までは「退避機会としての在留許可」が人道配慮による特別在留許可として出されていたが、これを入管法で明記する方向で検討中。これはいわゆる「補完的保護」を法的枠組みとして導入するもので、そうなった場合、難民申請者を救う形には、条約難民としての庇護、補完的保護による保護、人道配慮という3つができることになり、画期的だ。
② 「手続の明確化を通じた適正・迅速な難問認定」の提言に関しては、空港で庇護を求める者への案内を15か国語にするなどがあるが、中心は、誤用・濫用的な申請の抑制措置(振り分け、就労・在留制限など)であり、「管理の強化」だった。これらによって日本での難民申請は2017年の約2万人から最近の約1万人へと半分になった。入管庁はこれらの措置の実施を優先してきたが、今後は「救済の強化」に転じるべきだろう。
③ 「認定判断の明確化を通じた透明性の向上」の提言については、難民認定基準(難民該当性に関する解釈基準)や人道配慮の判断ポイントを公表することを検討中。これも重要なポイント。今まではなぜ認定された(されなかった)かは不透明だったが、基準が整理、公表されるならこれも画期的だ。認定基準が厳しすぎるか否かが冷静に議論できるようになる。
④ 認定に携わる者の専門性の向上」の提言については、UNHCRの協力による難民調査官の研修強化などがなされてきたが、認定権限が地方入管に委譲される中でこれは今後も大切。
送還・収用問題が大きくなった一つの理由が、被収容者の中には本来難民として認められるべき者がいて、彼ら・彼女らがノン・ルフールマン原則に反して強制送還される可能性があるということだった。今までの難民認定制度のままではそれはあり得た。その意味で、送還・収容と同時に難民認定制度の改革がようやく動き出したことは歓迎すべきだろうし、新設された入管庁の姿勢の変化の表れであることを願いたい。
これらの変化が入管法の改正などに反映され、また運用上の弾力化をも伴って、日本で救われる難民の数が年に40人程度でなく100人、200人となることを望みたい。
ps 僕は余計なことを言う傾向があるが、今回も、「難民認定室が出入国管理課の下にぶら下がっているのは、国際法に基づく難民認定を出入国管理行政のもとに行なっていることを宣言するようで、極めて異様。課に昇格するとか、人権擁護局に移すのがいい。」と申した。反応?オンラインだから不明(笑)。実のところ、この組織図が問題である、という認識は入管庁には全くなかった様子。