今月の初めに、インターネットを使った難民についての意識調査を行った。難民意識調査は新聞社などがときどき実施するが、「難民の受け入れには反対」という回答が多数を占めることが多く、それが難民に対する日本人の冷たさとして評価されることもある。政府の政策もそのような「世論」を念頭に行われる。
しかしこれらの調査は、難民についてほとんど知らない日本人が多い中で、背景説明をしないままに「難民受け入れに賛成ですか、反対ですか?」などと問うことが多ため、難民についての漠としたネガティブなイメージに基づいて回答がなされている可能性がある。
そこで今回は、難民の国際法上の定義とか、最新の日本の難民認定数やウクライナ避難民の受け入れ数、外国での難民救済への政府による資金協力の額など、最低限の事実を提供した上で質問をした。いわば「啓発」作業をした上で質問をしたのだ。
全国、全世代の回答者から得られた有効回答数は2500人。政治的傾向はリベラル系が14%、中間が55%、保守系が31%。
調査の結果は予想以上に前向きで、特に難民の受け入れに前向きなものだった。目立つ答えには、①19%の人が今までに難民募金をしたことがある。②難民問題は海外で起こっていることだから自分とは無関係だと思う人は23 %だけで、77 %はそう思わない、と回答した。③アフガンからの退避民のうち133人が難民認定を受けたことについても、83%が適切(ないしもっと増やすべき)と答えている。
④UNHCRに対して政府が毎年200億円前後を拠出していることを知っている回答者は10%に過ぎなかったが、改めてその額の適否について質問すると、適切であるとする者が56%、もっと増やすべきとするものが13%あった。
興味深いのは、⑤極度の貧困から逃れた者(経済難民)を難民として受け入れることに賛成する者が55%、反対する者が16%、どちらとも言えない者が29%だったこと、⑥気候変動に伴う災害などによって住み慣れた場所を失った者(気候難民)を受け入れることに賛成が62%、反対が13%、どちらとも言えないが25%だったこと。
「経済難民」も「気候難民」も難民条約上の難民ではなく、その数は世界中では膨大になるが、保守系が多い回答者がこのような解答をするのは興味深い。
一つ否定的な回答には、⑦欧米でのテロのニュースを見ると難民の受入れは怖いと感じると思う者が58%いた。難民=テロリスト的な誤解があるのだろう。
全体として、先行調査に比べて、難民の受入れに前向きな回答が多い。その理由には、ミャンマー、アフガン、ウクライナと難民に関する出来事が続いたことでメディア報道が増えたことの他に、インターネット調査の性格上、難民問題に関心がある人が調査に積極的に応じた可能性があること、最小限の背景説明を入れたことなど、調査の設計が影響した可能性もある。
この調査結果からみる限り、「日本人は難民に冷たい」という見方は必ずしも正しくなく、情報発信と啓発によって人々の意見が変わり得ると言えるかもしれない。
であれば、外務省は資金協力についてもっとその効果を広報すべきだし、入管庁はネットなどに流れる難民排斥の声は一部の人々の声と考えるべきだろう。「声なき多数派」は、意外に健全な見方をしている可能性がある。
詳細な分析はこれから。分析が終わったら結果を公開したい。2度目の調査も予定している。
Comments