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迷うウクライナ避難民

 ウクライナ避難民への支援をしている日本財団の調査では、大多数のウクライナ避難民は、状況が落ち着くまでの日本滞在希望だという。つまり、ずっと日本に留まりたいのではなく、戦争が終わるなど情勢が落ち着けば帰国したいと考えていることだ。

 「一時的な滞在」の意識は、日本生きたウクライナ避難民だけではない。ロシア進攻後に約700万人のウクライナ人が国外に避難したと言われるが、350万人のウクライナ人が帰国しているという。半数が戻っている計算になる。ポーランドなどに出稼ぎに行っていたウクライナ人男性が祖国防衛のために帰国したり、避難民が様子見で一時帰国したれいも入るだろうが、一般的には一方通行である難民の流れとは明らかに違う。

 祖国指向性が強いため、来日したウクライナ避難民はほとんどが難民認定申請をしない。今までに5%だけが難民申請をしただけと伝えられる。知り合いも「難民申請はしない」と言っていた。ウクライナ避難民は一時的に日本に避難しているつもりだから、定住や永住が前提の難民認定は求めず、現状の「特定活動」という在留資格で様子を見ているのだ。

 難民認定を求めない理由は、ウクライナ避難民の特殊性にある。彼女たちはロシアの武力侵略から命を守るために避難するいわゆる「戦争難民」だ。「戦争難民」は、原因となる戦争が終われば、一挙に帰国するものだ。ウクライナ政府も、戦争が終わった時には、国外に逃れた避難民の帰還を歓迎するだろう。

 もうひとつの理由は、避難民の9割が女性や子供で、国家非常事態宣言で出国が禁止されている夫や父をウクライナに残してきていることだ。状況が改善すれば帰国して家族と一緒になりたいと思うのは人情だ。

日本にとどまる気持ちが強くないことは、日本語の習得や就労意欲にも影響するため、定住支援策にも影響する。

 ミャンマーやアフガニスタンからの難民は、自国政府からの「迫害」を恐れたり、武装勢力の弾圧から逃れて来日している。迫害や弾圧は何十年も続いているし、今後も続くだろうから、日本に来た難民は地位の安定を求めて難民申請を行う。さらに、ミャンマー国軍やアフガンのタリバンが、国外に逃れた難民の帰還を歓迎すると想像するのは難しい。

 このように、今後どうするか迷うウクライナ避難民の特殊性を考慮して、日本政府は一時的な在留資格である「特定活動」の付与で対応している。EUもウクライナ避難民に対して「一時的保護指令」を発動した。もちろん日本ではいつでも、EUでは3年後には難民認定申請をできるが、1951年の難民条約の定義からして、彼女たちが難民と認定される事例は少ないだろう。

 ウクライナ「避難民」と呼ばず、「難民」として認定すべきだという意見もあるが、難民条約の定義に合致しないことに加えて、本人たちが難民認定を望まないのに難民認定証明書を押し付けるわけにはいかない。ウクライナ避難民は日本ではいずれ「補完的保護対象者」としての保護を受けることになるだろう。

 難民出身国の情勢と避難民の属性や心理は出身国によって違う。抽象的な難民は定義の上でのみ存在する。ウクライナ避難民は他の難民とその原因や特性において大きく異なり、受入国政府と受け入れ社会の対応も異なってくる。出身国の国情と難民の特性を理解すること、つまり「難民問題の政治的理解」は、政府だけでなく支援する者にとっても重要だ。

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