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昨年の難民認定数から見る難民制度の変化

昨年度の難民認定者数などについての統計が入管庁から13日に発表された。 難民認定数が74人、人道配慮による在留許可が 580人と、 2008年から2009年にかけてのミャンマー人難民申請者への認定(57人)と人道配慮(501人)を超えて過去最高となった。推測を交えてコメントする。

難民申請者数は2413人とほぼ10年ぶりに2000人台に戻った。2010年に始まった難民申請者に対する一律の就労許可の付与が契機となって難民申請者の急増を招き、2017年には2万人近くまでなったことを受け、入管庁が2018年から抑制策を導入したこと、2020年からはコロナ禍で外国人の入国が厳しく制限されたことが背景にあろう。

難民申請者の出身国はミャンマー、トルコ、カンボジア、スリランカ、パキスタン、バングラデシュなどアジア諸国が多いのは例年通りだ。近隣諸国では、例年2万人以上の難民申請者が出る中国からは28人、政治的弾圧の続く香港からはいなかった。香港からの政治亡命者は日本に来ず、欧米に向かうのだ。ちなみに、中国人難民申請者は毎年1万人ぐらいがアメリカで申請するが、半分は難民と認定される。同じく毎年1万人以上が逃げる専制主義国家ロシアから日本に保護を求める者はいないが、昨年、北海道まで泳いできた男性が1名申請したとの報道があった。意外ではないが、北朝鮮からはゼロ。

認定数はこの数年増加傾向にある。昨年ミャンマーが32人と増えたのは、2月の国軍クーデターを考えれば納得がいく。中国も18人と増えている。ウイグル族関係が多くを占めているのではないか。

 認定数増加には、ほぼ完成している「難民認定ガイドライン」の先取り適用と出身国情報制度の改善も背景にあるかもしれない。

 一番目立つのが、人道配慮による在留許可で580人に上り、そのうち本国情勢などを理由に在留を許可された者が525人(ミャンマーが498人)いることだ。昨年はこのカテゴリーには16人しかいなかった。この形の在留許可は、戦争・紛争や治安悪化による暴力の蔓延を原因とした広い意味での「補完的保護」に当たるだろう。ただ「補完的保護」は現行入管法にはないから、将来の法制化を視野に入れた「先取り実施」と言える。

 在留ミャンマーについては昨年の軍事クーデター後、「緊急避難措置」として希望者には在留資格「特定活動」が与えられた。昨年末のミャンマー人難民申請者2889人のうち、6割の1730人がこの在留資格を持っているという。これらの人々についても、難民認定手続が終った段階でミャンマーの本国事情が好転していない限り、「補完的保護」同様の在留資格が与えられるのではないか。

アフガンからの申請者はわずか12人だった。昨年末までに、大使館やJICAで勤務していた500~600人ほどのアフガン人が来日していたはずだが、現在は外務省やJICAで雇用されており、難民認定申請を行っているのかどうかは不明だ。もし申請するなら、「難民」として保護されることになるのではないか。外務省やJICAと雇用関係になかったアフガン人が今後日本にまで来て難民申請するかはわからないが、申請がある場合には当然、前向きなスタンスで対応すべきだろう。

 ところで、注目を集めるウクライナ避難民は現在約900人で、国費で毎週20人のペースで来日しているそうだから、総数はかなりの数になるだろう。彼女たちは短期滞在ビザで入国し、在留資格を「特定活動」に切り替え中と思われる。それは「人道配慮による在留許可」に当たるものだが、「戦争・紛争など本国情勢を考慮した在留許可」という意味での「補完的保護」に当たるか否かは、難民申請をしたうえで、ロシアの軍事侵攻による「不特定多数への迫害の恐れ」の有無で判断されるだろう。避難民のうちどのくらいが難民申請をするかはわからない。が、申請があった場合には、ウクライナ避難民救済が日本の安全保障政策とパッケージにされていること、また国民の強い支持があることからすると、「条約難民」あるいは国際人権法を踏まえた「補完的保護対象者」のいずれかになるだろう。来年度の難民統計はかなり変動しうる。

今後は、「条約難民」、「補完的保護対象者」、難民申請中特定活動などその他の「一時的保護」の3本建てになるのだろう。

今回の難民認定統計は、国際環境が激変し、また日本の難民条約加入40周年を来年に控えるという節目の年に出された。世界各地で紛争の続いた1990年代の認定数が一桁だったころに比べると、日本で保護される人の数は増えてきた。もちろん欧米に比べればごく少ないが、その欧米では、ウクライナ避難民を例外として、移民難民の排斥の動きが強まっている。例えば、ポーランドはウズベキスタンとの国境で中東からの難民・避難民を追い返している。英国は、密航業者の助けで英仏海峡を渡って不法入国する者をアフリカのルワンダに送り込む計画を同国と交渉中だ。地中海のボートピープルは相変わらずリビアに送り返されている。昨年270万人がメキシコ経由で押し寄せたアメリカでも、国境での追い返しが止まらない。

 いずれの国でも国民の反撥が政府の強硬姿勢の背後にある。その中で日本の受入れが少しずつでも増えているのは注目を引く。それが国民の支持の増加を反映しているものであればなお良いことだ。

国際情勢が不透明となり、日本周辺を含めた世界各地で紛争が起きる可能性が増えている。また、現在の内閣はリベラルな国際秩序と人権を守るという姿勢を旗幟鮮明にしている。その姿勢が続くなら、今後、日本に自発的に来る難民や紛争避難民が増える可能性が十分ある。

 であれば難民認定と補完的保護のための仕組みを法律と運用の両面において速やかに整備することが必要だ。また、受け入れ後の支援体制がまだ十分でないから、今回のウクライナ避難民への「支援ブーム」を、世界各地からの難民や避難民にも広げて、官民共同の保護体制にグレードアップすることが求められるだろう。


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