山田孝男特別編集委員による僕のインタビューを含む引用
(前略)
日本へ来た難民、避難民の数は欧米と比べればケタ違いに少ない。が、国連難民高等弁務官事務所(難民支援機関、UNHCR)が使う庇護(ひご)率(難民、避難民のうち滞留を許された者の割合)で見れば50%超。欧米並みである。
入管法改正の目的は大きく分けて三つあった。
(1)保護対象を難民だけでなく避難民へ拡大
(2)就労を目的とする難民申請制度の乱用抑制
(3)収容の運営改善
――である。
(1)と(2)は第6次出入国管理政策懇談会の提言(2014年)などに基づく。(3)は21年3月、名古屋市の入管施設に収容中のスリランカ人女性が亡くなった事件を踏まえている。
ジュネーブのUNHCR本部財務局長、駐日代表を務めた滝沢三郎・東洋英和女学院大名誉教授(75)がこう言っている。
「日本は、過去10年の準備がなければ急激な変化に対応できなかった」
「国際難民条約の理想が崩れかけている時代、日本はいい意味で世界に逆行しています。しかも欧米と違い、難民を入れるなという声がほとんどない。(改正法は)規模はまだ小さいけれど、日本型の規律ある人道主義を世界へ示すきっかけになると思う」
気宇壮大な展望だが、難民、避難民を受け入れる条件が十分整っているとは言えまい。多くの外国人を迎え入れるなら、外務、法務両省だけでなく、厚生労働省(就労支援)や文部科学省(教育支援)の緊密な協力が欠かせない。
2年前、今回とほぼ同じ内容の入管法改正案が国会に提出され、スリランカ人女性の事件で廃案に追い込まれた時、各省庁はバラバラだったと聞く。
世界は激変している。大きな背景を見失い、改正入管法の評価を誤るべきではない。(特別編集委員)=毎週月曜日に掲載
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