やや遅すぎた感もあるが、岸田首相のウクライナ訪問は政治的にも人道的にも意義がある。
首相がウクライナ行きの列車に乗り込んだポーランドとの国境のプシェミシルには僕も15日(水曜日)に行った。そこでウクライナ避難民を支援するウクライナ人団体から話を聞いたのだが、彼らの念頭にある「日本」の姿は薄い。欧米諸国の陰になっているのだ。日本政府が速やかに2300人のウクライナ避難民を受け入れたことや、数千億円の多額の無償・有償の財政協力をしていることも知らなかった。他方で、「日本は軍事援助をしてくれていると聞いた」など、間違った情報を持っていた。
日本のNGOのポーランドでの活動もほとんどなく、ようやく国際協力NGOの「シャンティ」が活動を始めるようだ。ケア・インターナショナルやオックスファムなどの国際的NGOは、昨年2月のロシア進攻直後からポーランドやウクライナで人道支援を開始し、今では数十の現地NGOと協力して支援のネットワークを確立している。そのスピードと組織力は、UNHCRなどの国連機関と比べて全く遜色がない。
岸田首相の訪問で、日本はG7議長国としての面目を保つとともに、ウクライナ人(やポーランド人)にとっては、ウクライナへの国際的支援があることを再確認する機会となろう。それは日本の国際的存在感の薄さを補う。
また、日本のNGOがポーランドやウクライナでの活動を開始するきっかけにもなるかもしれない。ケアのような国際的NGOは、支援の開始も速いと同時に、世界各地で起きる人道危機に対応するため、状況に応じて支援を減らすことがある。ウクライナへの支援がいつまで続くかは不透明だ。現場への展開のスピードは遅くても、いったん進出したならば小規模であっても長く活動を続ける傾向のある日本のNGOは、活躍の機会はむしろこれからかもしれない。
また、いずれ来るウクライナの戦後復興は長期間で膨大な費用を伴う。復興開発支援のニーズは日ごとに増えている。それを見越した日本企業のいくつかは調査員などを送り込んでいるようだ。
岸田首相のウクライナ訪問が、これら日本の官民の活動を加速させることになればいい。
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