写真は昨日の日経記事。42年前に国連に入った時から「日本人を増やそう!」と外務省が頑張ってきた。そしてJPO制度はそれなりに成果を上げている。しかし日本人職員は望ましいとされる数には達していない。その理由は3つある。
第1は「言葉(英語)の壁」だ。これについてはしばしば言われてるから説明の必要がない。ただし、日本人が英語ができないのは、伝えるべき自分の考えがないからであって、それは教育のあり方にも原因があるということは念頭に置くべきだ。
第2は「専門性の壁」だ。国際機関の雇用はいわゆる「ジョブ型雇用」であるのに対して、日本は「メンバーシップ型雇用」だ。例えばJPOに応募するには少なくとも2年の専門的な仕事の経験が必要だが、日本の組織でそれを満たすことは難しい。採用の際に専門性は問われないし、入ってからもいろいろな部署に配置転換されて専門性が身に着かない。このギャップを埋めるために日本人志願者はとても苦労する。
第3の壁は「文化の壁」だ。暗黙の了解に頼り自己主張を控えるなどの「日本の掟」の多くは国際機関では通用せずむしろマイナスになるが、小さいころから身に着けてきた「日本の掟」の呪縛を逃れ「国連的掟」に馴染むには時間がかかる。
英語圏の志願者にとってこの「3つの壁」は存在しない。彼らは英語が母国語で、ジョブ型雇用の組織で働き、何事も言語化する「低文脈文化」で育っているからだ。彼らにとっては国連というのは何ら特別な職場ではなく、多くの選択肢の一つに過ぎない。日本人応募者は最初から構造的なハンディを背負っていて、「個人としての国際競争力」が弱いままに国際的競争に立ち向かわざるをえない。
ひとつの救いは日本でも「専門性の壁」が低くなる傾向が出ていることだ。日本の大企業がどんどん「ジョブ型雇用」を導入している。それが進むならば、大学を出て就職する際に、いつか国際機関に入る時を見据えた仕事(ジョブ)を選ぶことで、専門性を身に着けることができる。それは国際機関のみならず、国際化するジョブマーケットで生き残るのに役立つ。
「3つの壁」、特に「文化の壁」に対応するのを支援しようと6年前から「国際機関で働いてグローバル人材になる」と言う変わった名の講座を開いている。今までに13回開催し、参加者は延べ300人になるが、熱意も能力も素晴らしい潜在力の持ち主ばかり。こういう若者がいずれはこの状況を変えるだろう。
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