自民党が「国連改革に関する提言」をまとめたという。提言は、ロシアによるウクライナ侵攻によって国連安保理が機能不全に陥っている現状を指摘し、日本がリーダーシップを発揮し、国際社会に道筋を示すことを求めているという。
政府は何十年も日本を国連安保理の常任理事国にするよう国際社会に求めてきたが失敗した。失敗の根本的原因は、「国連=安保理」ととらえ、その中での「トップグループ」入りを求めたことにある。安保理は第2次大戦の勝者連合で、拒否権で守られているから、敗戦国日本がそこに入り込むのはもとも無理だった。ましてや、日本の存在感が小さくなる中で、「トップ入り」が今後成功する可能性はゼロだ。中国とロシアが必ず拒否権を行使する。外交資源をこれ以上無駄に費やすべきでない。
国連改革の方向は安保理の改革でなく、経済社会理事会系のUNHCRとかWHOなど専門機関への財政的・人的貢献に向けられるべきだ。安保理が「第一の国連」なら、それらは「第二の国連」とも呼ぶべき存在だ。そのような国際機関で働く職員数は10万人を超し、日本人職員も1,000人ほどいる。メディアに報道されることは少ないが、途上国や紛争国で専門的で堅実な仕事をして数千万、数億人の人々の命と生活を守っている。いま、ウクライナやその周辺国でも、多くの国際機関が現地NGOなどと協力しつつ緊急人道支援活動を行い、1000万人を超す国内外の避難民の命を救っている。安保理は機能不全だが、これら「第二の国連」機関は立派に機能していることをメディアも報道すべきだろう。
このことを考えるなら、「国連=安保理」ではなく、「国連=経済社会理事会系の組織」としてとらえ、それら「第二の国連」諸機関の機能強化と活性化を図る方がいい。この分野での日本の貢献の過去の実績は大きく、国際的にも認識されていて、さらなる貢献が可能だ。これは北欧諸国のアプローチで、今や「中級国家」となった日本がたどるべき道だ。
ただし、「専門機関のトップのポストを獲得すべきだ」という「トップ信仰」はここでも捨てるべきだ。専門機関の業績は数千人の職員の日々の努力で支えられているものであり、トップが誰かというのはイメージ以上の意味はない。変な日本人トップがいればイメージ的に逆効果だ。
とはいえ、日本人が国際機関で職員として活躍し貢献をするのは容易ではない。語学だけでなく、雇用制度も文化も違う環境での勝負だ。優秀で志が高いのに、他の外国人に「使われて」しまい、「使え」ないことが多く、上級幹部までたどり着けない。その点で外務省が始めた国際機関への中堅職員(P4前後)派遣制度はいい試みだ。が、今のところ数が限られている。
それやこれやで始めたのが日本人職員応援のための人材コースの濃縮版。10回分を1回に詰め込む要約版を明日の夜8時から10時に開催するので、関心のある向きは下記リンクから覗いてほしい。将来、国際機関で活躍したい人は無論、JPO受験者にも役立つ(はず)。
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