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入管法: 野党提案の「難民等保護委員会」への2つの対案

 入管法改正案に対する野党案には、最も重要な点として、難民等の認定を行う「難民等保護委員会」の創設がある。提案には、難民認定の主体を法務大臣から同委員会に移し、政治的中立性を保つため、委員長・委員は国会同意人事とするほか、専門委員・調査官等を抱え、関係行政機関の長に対する勧告や、国会報告をするとある。

 独立委員会創設は野党案の目玉だが、よくわからない点が多い。専門委員や調査官を誰がどういう基準で選ぶのか?彼らは難民認定で一次審査もするのか、それとも不認定の結論に対する不服申し立て審査(2次審査)に限るのか。認定の主体が委員会だとすれば一次審査もするべきだろうが、その場合、入管庁の職員である難民認定室職員や420人の難民調査官も委員会に移し、指揮命令系統に入れるのだろうか?現行では難民調査官の大半は、難民申請が一桁の地方入局在留管理局で入管業務を遂行する傍ら、難民審査はパートタイムで兼任している。野党が厳しく批判している117名の難民参与員はクビにするのか?委員会に移すのか?

 一次審査を入管庁に残すのであれば、委員会の機能は入管庁の案件処理に大きく依存し、独立性(と独立の印象)は大きく低下する。加えて野党が想定・希望するように認定数が増えて「認定率」が急上昇することにはならないだろう。もともと日本にまでわざわざ来る難民は少ないのだから。

 野党案の一番の問題は、法案趣旨説明によると、同委員会は内閣府や内閣官房などではなく法務省の外局とするという点にある。その場合、トップは法務大臣になる。当然のことながら、委員会は法務大臣に対して提案・勧告はできても指示・命令はできない。それでは独立した機関とは言えないし、第3者独立機関というイメージもなくなる。法務大臣に提言・勧告するだけなら現行の「難民参与員制度」の独立性と専門性強化で済む。独立性を謳う野党案の致命的欠陥だろう。抜本的な練り直しが必要だ。

 で、野党対案への現実的な対案がある。同じ法務省内で難民認定業務を入管から分離するのであれば、(僕が昔から言っているのだが)入管庁の難民認定室(業務)を人権擁護局に移す方法がある。入管庁から分離し、法務省内に戻す。

 そうすれば難民認定業務の基調は国境管理から人権擁護に移る。人権擁護局の本省の定員は100人に満たないが、難民認定業務の移転で組織が大きくなり、影響力も増す。日本人だけでなく、外国人である難民の人権も守る、というのは人権局としては正しい方向だろうし、課題の独立人権委員会の創設にも追い風になる。人権重視を掲げる岸田内閣にとっても悪い話ではないし、日本のイメージの改善になる。

 このアイデアは、僕も参加した2013~14年の「難民認定にかかる専門部会」で議論され、某弁護士は賛同していた。しかも、最近重大な事実を発見した。なんと入管庁難民認定室と人権擁護局は法務省の同じ建物の同じ階にある!指揮命令系統を変えて看板をかけ替えるだけで、スタッフや物品の移動も要らない。もしかして、上記の提案を念頭に部屋を配置してあるのかもしれない。

 しかしもっと抜本的で、前向きな改革もある。難民認定業務をどこに置くかといった次元を超えて、不可避的な将来の外国人との共生を見据えて外国人庁を作り、内閣府の外局とすることだ。難民業務も含め、外国人政策全般を法務省から切り離す。菅・前首相が移民政策に前向きになっているが、この先の数十年、数百年の国の形を変えて行く戦略的司令塔とするのだ。

今の野党案は日の目を見ない。しかし外国人庁創設は包括的大改革であるだけに、逆に国民的支持が出得る。ウイシュマ事件という個別の問題にいつまでも拘泥せず、大きな国家戦略を打ち出すことで、衰退する立憲にとっては救世主となりうる。

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