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入管法案と新聞の報道姿勢

saburotakizawa

内外の新聞をディジタルを含め7紙も購読しているが、今回の入管法改正についての新聞の報道は奇異に見える。

 M紙やK紙は、「入管法改悪反対」運動の機関誌のように見えた。また、複数の新聞社からコメントを求められたが、今回の法案を最初から「改悪」とするスタンスが明らかで、それに異論を唱える僕のコメントは載らなかったこともある。事前に新聞のスタンスを聞いておいた方がいい。

 スリランカ人女性の死亡事件が国会の最大争点となり、与野党の政治的思惑が絡んで実質的審議がないまま法案は廃案となった。衆議院法務委員会の審議は小学校の学級委員会レベル(以下)だった。新聞は、個別事件を追うなら、添付の産経新聞にあるような数百人の「難民申請者」の例も報道し立場を明らかにすべきだったろう。なぜ犯罪を繰り返すのか、それと収容の間い関連があるのか、被害者はどう思っているのか...。これこそ長期収容の問題そのものだ。

 恐喝などの罪で懲役2年6月の実刑判決を受け、仮放免中に強姦罪で懲役5年など2度の罪を犯し、4回目の難民申請をしている者...。このような者は帰国まで上限なく収用を続けるべきなのか、強制退去にすべきなのか(現行法上はできない)、それとも収用を解いて社会で暮らすことを認めるべきなのか?それぞれの根拠は何か?日本の社会はどのオプションを受け入れるだろう..?こういう問いをなぜメディアは取り上げないのか?

 また、国会に提出された法案関係資料は500ページだが、記者たちは新旧対照条文を含めて全部読んで、何が変わったのかを理解した上で記事を書いたのか。(もっとも、スリランカ女性が収容所内で死亡したのは明らかに入管の手落ちである上、ビデオ映像を国会に提出することを頑なに拒む法務大臣の姿勢は理解不能だから、記者たちがその「ドラマ」に目を奪われるのも無理はない。)

 日本の新聞は「客観報道」的な姿勢を謳ってきたが、次第に独自の政治的立場を取るようになっているのかもしれない。旗幟(きし)を鮮明にすることはいいことだが、読む側としては、自分の購読している新聞が特定の政治的立場に立っていて、それだけを読んでいると自分の見方が狭くなり、「タコツボ」に入ってしまったり、「井の中の蛙」になる可能性を念頭に置くべきだ。


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