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入管法改正と「規律ある人道主義」

国会に入管法改正案がまもなく上程されるが、現行入管法の問題点が入管庁ホームページに公表された。(https://www.moj.go.jp/isa/content/001390378.pdf

 2年前の入管法改正案は廃案になったが、その後、2021年2月の国軍クーデターを受けての在日ミャンマー人1万1千人に対する特別在留措置、同年8月タリバンに制圧されたアフガニスタンからの退避者約850人の受入れ(うち133人を難民と認定)、昨年からは2300人のウクライナ避難民の受入れなど、総数1万3千人に上る受入れや国内での庇護が行われた。これは28年間に亘って受け入れられたインドシナ難民11000人を上回る。さらに「難民認定ガイドライン」も策定されるなど、難民受入れ政策は大きく動いている。しかし入管法は変わらず、運用の実態との齟齬が生じている。

 法務省・入管庁が特に問題視するのは難民制度の濫用・誤用だ。それ自体は日本に限らず先進国の多くに共通する問題だが、日本の入管法の問題は、いわゆる「送還停止効」のため、例えば凶悪な罪を犯した者であっても難民申請を継続する限り強制送還が停止されること。アメリカ、オーストラリア、イギリス、フランス、ドイツなどには例外が設けられ、明らかに根拠がない申請の場合や公共の安全を害する場合などは送還ができるようになっている。「送還停止効に例外がある」のが「国際基準」だ。

 日本では、この「例外なき送還停止効」のため、一番最後(6番目)の図にあるような状況が生まれている。不法滞在者6万6千人のうち「送還忌避者」が3200人。そのうち半数の1600人が難民申請をし、うち400人が前科を持つ。難民(申請者)が罪を犯すのはまれだから、前科を持つ者が送還逃れのために難民申請をして「送還停止効」を活用していると考えるのが自然だ。一部で言われるように「難民が強制送還される」のではなく、「前科を持つ者の一部が難民申請をする」のだ。入管法改正案の重要なポイントの一つが「送還停止効」に例外を設け、そのような者の送還を可能にすることだ。

 ところで骨子には「ウクライナ避難民などを安定的に保護する仕組みがない」とわずか一行で書かれているが、もう一つの重要な改正点は「補完的保護対象者(準難民)」の枠組みの創設だ。この枠組みの創設は2014年の「難民認定制度に関する専門部会」の4つの提言の一つだが、ウクライナ避難民などの受入れでその実際的な重要性が高まった。

 現時点でウクライナ避難民などは「特定活動」の在留資格で日本に滞在している。この資格は法務大臣が個々の外国人について特に指定する活動で、外交官等の家事使用人やワーキング・ホリデーで来日する学生などに与えられるものと同じだ。この資格だと難民や避難民の強制退去を禁じた「ノンルフルマン原則」の対象にならず、法的地位は不安定だ。「補完的保護対象者(準難民)」の枠組みはこの不安定さを解消し、難民と同じような権利を与える。難民条約の対象の狭さを補う「補完的保護」や、大量難民の流入に対しての「一時的保護」の制度は欧米諸国で広がっており、政府が目指す補完的保護の枠組み創設は国際的潮流に沿うものだ。

 以上の二つの法案修正がなされることで、10年近く前に始まった日本の(避)難民受入れ制度の改善がひと段落する。世界各地で多数の(避)難民の受入れや流入が政治問題になり、「締め出し」が進む中で、良い意味で世界の流れに逆行している。

 この問題の核心は国境管理が十分に機能せず、無秩序な流入が続いていることだ。それは欧州やアメリカに見られるように、国民の反撥と社会的分断を引き起こす。紛争地から遠く海に囲まれ、国境管理が効果的な日本ではそのような事態は起きていないが、「台湾有事」の場合にはあり得る。

 外国人も国民も国もルールを守って秩序を守るのが日本の強み。この先、日本が人道的見地からの(避)難民受け入れを拡大してゆくには、「規律ある人道主義」の精神に則った入管法の改正が必要だ。

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