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入管法に関する国連人権理事会特別報告者の公開書簡は「国連ローンダリング」

更新日:2023年7月30日

同書簡について日本政府(法務省)が国連人権高等弁務官事務所を通して抗議を行った。政府が個人の資格の国連報告者に抗議するのは異例だが、確かにこの公開書簡のあり方には問題がある。

 何よりも手続きがフェアでない。特別報告者は、法務省に事前に事実関係などを確認し、法務省に反論がある場合にはそれを反映するといった作業をしないままに政府を批判する書簡をネットに公開した。一応、48時間以内にコメントを出すように、とあるが、受けとって48時間以内に返答できる政府などどこにもない。国連だったら48か月かかるかもしれない。48時間以内に返事ができないのを知りつつ公表して一方的な断罪、欠席裁判を行った。

 僕はずっと昔、国連で観察部長(Inspector-General) をしていた。幹部の不正等を調査して事実を確定し、処分の勧告もした。実際に某主要加盟国派遣の幹部がクビになったこともある。調査報告書を事務局長に提出する前には必ず当人にドラフトを見せ、そのコメントを反映した。この手続きは必須で、当人の弁明を聞かないまま処分があったような場合には、手続きに瑕疵があるとして国連行政裁判所で敗訴し、多額の賠償金を課される上、出身国との関係が悪化する可能性がある。最終報告の前に関係者の意見を聴取する、それが国連の報告書の常識、鉄則だ。

 今回の特別報告者はそれをしてない。2021年にも同様な書簡が出たが、その時も政府と事前の接触はないまま一方的に書簡を公開し、日本政府を怒らせた。そんなことは気にしないのだろう。

そもそも、政府の意見も聞かず、来日して関係者と会うこともないのに、どうして報告書が書けるのか?実は報告書は日本の支援団体から寄せられた情報に基づいている。その結果、批判や勧告の内容は支援団体の主張と全く同じになる。あえて言えば、書簡は国連の名を冠しているものの、その実質において市民団体の書簡、さらに言えば「国連ローンダリング」をされた書簡だ。「国連信仰」が強い日本で、「国連」の名前が政治的に利用されている。

書簡は、最後に「政府と対話をしたい」と形だけ言っているが、そんな特別報告者と対話したいと思う政府などない。このような書簡は、意図した効果を生むどころか逆の効果を生む。政府は、書簡発出の手続きがフェアでなく、内容が支援団体の言い分と同じであること、そもそも特別報告者の見解には法的拘束力がないことなどから勧告は無視する。特別報告者も報告が無視されたことに不満を残す。来年以降も、これら特別保護者の報告は政府に無視されるだろう。

ちなみに、国連人権委員会の対日審査の場合には、委員会は同様に市民団体からの情報に基づいてドラフトを準備するが、最終報告のドラフトを政府に送る。政府には説明なり反論なりの機会がある。僕も昨年の11月の人権委員会の対日審査を傍聴したが、日本政府は20人を超える大型代表団(半数は女性職員)を送り込み、委員からの質問に一つ一つ丁寧に答えていた。議長もそれを大いに評価していた。人権委員会では政府と委員会の間に対話や一定の信頼関係がある。このため、国連人権委員会の報告書は少なくとも手続き上はフェアなものとなり、政府もその意見に必ずしも同意しないまでも傾聴はする。

特別報告者と日本政府の間には今や対話も信頼関係もない。特別報告書が(自己満足のためでなく)日本の入管政策を改善することを真面目に考えているなら、 いたずらに上から目線で政府の怒りを買うような愚は避け、「どのようにしたら日本政府が動くのか?」を真剣に考えるべきだ。それは法律の問題ではなく、常識の問題だ。

 自分たちが正しいと思うことを一方的に発表するだけで一国の政策が変わるほど現実は甘くない。特別報告者の行動は、彼らの常識と政治感覚のなさを暴露するだけでなく、「国連」の権威をさらに低下させている。

 「国連」の名を利用して「外圧」にしようとする支援団体も考え直したほうがいい。

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