先週の木曜日15日に入管庁の難民調査官研修の講師を務めた。全国の地方入管から集まった男女20名の難民調査官を前に「外国人の人権と難民の保護」という与えられたテーマで3コマの講義。入管庁批判が「ブーム」のようになっている中で、「外国人の人権と難民の保護」というテーマはやけどをしそうにホットだ。
一週間の研修の講師陣は入管庁幹部のほか、学者・研究者、NGO(難民支援協会)、UNHCR、外務省職員など。
第2次大戦後の人権規範の伸張は、1948年の世界人権宣言、1966年の国際人権規約に続き、冷戦終結後のグローバリゼーションの流れと共に、1993年の国連人権高等弁務官事務所や2006年国連人権理事会の設立などで加速した。しかし、近年のグローバリゼーションの衰退、中国やロシアなど専権・専制的国家の台頭と西側諸国の国境管理の強化で、国家の力が増し、人権保護にとっては厳しい時代が来た。
難民保護の分野でも、欧米諸国を中心に(ウクライナは例外として)難民排斥の動きが強まっている。アジアでもタイやバングラデシュは、これ以上のミャンマー難民の受入れはできないと難民の流入を阻止したり、追い返したりしている。両国とも数十万人の難民を長年に亘って受け入れており、その負担は大きい。「難民の安全」国家の安全」のバランスが、後者を重視する方向に動いている。
それに逆行するように、日本は昨年来、ミャンマー、アフガにスタン、ウクライナからの難民・避難民の大量受入れに動いている。「周回遅れ」の受入れ増加だが、この動きが一時的なものか、長期的に「難民開国」につながるものかは、様々な要因とプレイヤーが絡んでいてまだ分からない。
日本が「難民鎖国」の汚名を捨て去り「難民開国」の方向に向かうには、難民認定制度の改善と同時に、難民調査官の専門的能力の向上が必要だ。120人を超す難民調査官たち(その多くは東京と名古屋)は、多多数の案件と出身国情報の入手困難さで苦労しているようだ。
入管庁は職員数6200人を超える大組織になったが、それだけ職員の研修ニーズも増える。今年度から新設された研修企画室のもと、難民調査官の研修もさらに強化される必要がある。
PS: 僕のマラソンの原点は、写真の法務省赤レンガ棟の正面を入って右側に当時あった洗面所。45年前、1976年から77年にかけて週3回ぐらい昼休みに皇居を一周した。時間は35分ぐらいだったからキロ7分で今と同じぐらいだ。今どきの国家公務員は忙しくて、昼休みに皇居ランなどという余裕はないだろうが。
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