世銀の世界開発報告は、その時々の大きな開発問題についてデータと分析に基づいた質の高い報告書を毎年出し、途上国政府や開発業界に大きな影響を与えてきたが、来年は「移民、難民と社会」というタイトルで初めて移民・難民問題を取り上げる。
その作成経過報告と意見交換を兼ねたハイブリッド会議が世銀東京事務所であった。執筆責任者のザビエ氏の報告に続いて15人の日本側参加者からコメントがなされた。僕もその一人。
来年3月に公表される報告書は、移民現象と難民現象を分けることなく、経済・社会・人道の3つのレンズで統一的に分析して、当事者、出身国、受入国すべてにとって好ましい状況を作りだす政策や手段を提言する。
日本はこの数年、移民(外国人労働者)や難民に門戸を開きつつあるが、施策としては省庁単位の者の寄せ集めで、そこに統合的な戦略があるようには見えない。日本にとって移民・難民問題がこの先さらに大きな問題になることが確実な中で、世界開発報告2023から学べるアイデアや教訓は多いはずだ。
ミクロな視点からの研究が多い日本の移民難民研究も、このような大きな視野からの調査と提言から学べることは多い。世界開発報告2023は、移民難民にかかる教科書としても使えるだろう。
移民や難民についての国連グローバル・コンパクトに冷淡な日本政府だが、今回の世銀報告には財務省だけでなく、外務省、そして法務省・入管庁も十分注意を払うべきだろう。
今回の報告作成には日本政府の見解は求められていないようだ。世銀の邦人職員も作成チームに入っていない。世銀における日本の地位の低下も影響しているのだろうが、残念なことだ。
来月にジュネーブであるUNHCRの執行委員会でもこの報告書についてプリゼンをするという。
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