ウクライナ戦争が一つのきっかけで、世界的に難民に対する共感、支持が広がっているとの調査。日本でも同じことが起こっている可能性がある。
日本ではウクライナ避難民の積極的な受け入れが官民で進む。ただし、どのくらいの避難民が日本での長期滞在を望むかはわからない。ミャンマーやアフガニスタンから避難してくる者の多くは長期滞在・定住を念頭に難民認定申請をする。これに対して、ウクライナ避難民で難民申請をしたものはわずか3名だ。夫や父親を残して来日していることもあり、戦争が終われば大半が帰国すると思われる。
これもあって、彼女たちの支援は必ずしも容易ではない。現時点では多くが知り合いや家族のをもとに身を寄せているが、滞在が長期になれば資金も枯渇するので就労が必要になる。
しかし「日本語の壁」が立ちはだかって、安定した仕事に就けたのは少数のようだ。ウクライナでの資格や技術は活かせない。小さな子供と避難してきた場合は、子供を預ける先が必要だ。雇用側としては、戦争が終われば帰国すると思われる彼女たちに、どこまで責任ある仕事をしてもらえるか、という懸念もある。そのほかにも住宅や子供の教育など、(避)難民定住には多くの課題が伴う。
とは言え、ウクライナ避難民は教育も受けており、多くが英語を話し、現代的な生活に慣れている。知り合いの避難民女性は医学部3年生だった。いわば「高度人材」だ。「我が町にどうぞ」と歓迎する自治体も多い。支援がしやすい人々だ。
ウクライナ避難民が(国際政治的見地から)他の国からの難民・避難民に比べて優遇されていることは事実だ。人道的見地からは、日本がまず手を差し伸べるべきはアジアの国バングラデシュに120万人もいるロヒンギャ難民だろう。彼ら・彼女らが仮に日本まで来て難民申請すれば、大半が難民認定されるだろう。
ただ、数十年にわたる激しい迫害と差別で教育を受ける機会も奪われて、数字も読めない、自分の名前も書けない、子供も何人もいるような人々だから、定住支援の難しさは何倍にもなる。国籍を奪われて、キャンプから出ることも認められず、パスポートもなく、飛行機代もないから、日本まで大勢が来る可能性はない。「我が町へどうぞ」と手を挙げてくれる自治体も多くはなかろう。ロヒンギャ難民のような場合に日本ができる一番の貢献は、支援をしているUNHCRやバングラデシュに対する財政的支援だ。
40年前のインドシナ難民以来、多数の難民受け入れの経験が乏しい日本としては、まずはウクライナ避難民の支援で経験を積み、支援体制を整えたうえで ロヒンギャなど他の国からの難民受け入れに備えるのがいいだろう。ウクライナ避難民受け入れは、日本が「難民開国」に向かい、日本社会がいい方向に変わるきっかけになる。
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