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ウクライナ避難民「受け入れ格差論」をどう考えるか?(1)

 一部のメディアが、ウクライナ避難民とミャンマーやアフガニスタンなどからの難民への対応の違いを批判して、受け入れには格差をつけるべきでないと主張している。この格差論をどうとらえるべきか?

 国際的な難民保護の基盤は「領土的庇護」だ。逃げてきた難民を自国領土内に入れて「主権のカベ」で保護する。自力で目的国にたどり着かなくてはいけないが、いったん入国すれば難民条約の「ノン・ルフ―ルマン原則」によって、難民不認定と判断されない限り、強制的に退去を命じられることはない。難民認定手続きはどの国の出身かに関わらず、「迫害の恐れがあるか否か」の認定を目的に無差別に行われる。クルド人が難民認定されることもあれば、ウクライナ人が難民不認定となることもある。認定制度に内在的な格差はないのだ。これは「自力救済型」の保護と呼べる。

 ビザ取得とか旅費の工面ができないなどで、目的国まで自力でたどり着けない難民についてはどうするか?第三国定住という保護の仕組みがある。日本は、タイなどアジア諸国の難民キャンプやスラムで数十年暮らす難民の中で、特に保護を要する希望者を選考して日本に移住させ、日本語や就労支援をしている。現在は年間60人の枠がある。第三国定住は難民条約上の義務ではなく、どの国の出身者を何人ぐらい受け入れるかは受入国の政策的判断による。特定の難民が選別されるという意味で「格差」がある。これは「他力救済型」の保護と言えよう。

 ウクライナ避難民の受入れは「折衷型」だと言える。普通では厳しい条件が付くビザ要件を緩和し、来日を容易にした。旅費を工面できない者については、飛行機代を政府が出すなどの優遇措置をとっている。来日後に難民申請して「領土的庇護」に浴するかは各人の自由だ。このような優遇措置は他の国からの難民には適用されないから、ここにも明らかな「格差」がある。

 批判者は、このような「格差」をなくし、ミャンマーやアフガニスタンからの難民も同等に扱うべきだ、と主張する。これらの国からの難民を同列に差別なく扱うというのは人道的・倫理的には正しい。ただその論理は実際上は行き詰まる。

 ロヒンギャを含むミャンマーとアフガニスタンからの難民に対してウクライナ避難民同等の優遇措置をとるのなら、論理的には、それはトルコのシリア難民、ケニアのソマリア難民、スーダンにいるエチオピア難民、ウガンダの南スーダン難民、イエメン難民、コロンビアにいるベネズエラ難民などにも適用されるべきだろう。究極的には世界の難民2500万人すべてに対して適用されるべきだろう。これらの難民の命や人権は、ウクライナ避難民の命や人権と同等であり、対応に格差があってはならないからだ。

 命と人権の等価性で言えば、5000万人を超す国内避難民も同等に扱われるべきだ。

 しかしすべての国の難民や国内避難民に対して等しく優遇措置をとって来日を支援することは、論理的、倫理的であるにしても、現実的ではない。優遇措置をとる国と取らない国の間に「格差」を設けることは避けられない。では優遇措置をとる国はどう選ばれる(べきな)のか?(続く

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