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ウガンダのオリンピック選手逃亡劇

ウガンダでも大きく報道されているようで、それによると、妻子を抱えて貧しく、アパート代も払えないような状況で、日本で働いて家族に送金することを考えての行動のようだ。個人的動機は理解できるが、ウガンダのオリンピック選手としては思慮の浅い行動だった。おそらくは、働き先、難民申請の可能性などにつき、移動を助けたウガンダ人コミュニティーからのアドバイスに従ったのだろう。

彼は難民申請は結局せず、しても「日本で働きたい」というのが理由だから、難民として認められる可能性はないが、2017年までだったら、難民申請をすれば理由を問わずに受理され、半年後には就労が認められたはずだ。難民条約は人種、国籍、宗教、社会的集団、政治的意見という5つの理由だけを挙げているが、それ以外の理由でも申請でき、時間をかけて難民性の審査がされたことだろう。難民申請が認められなくても申請を何度でも繰り返すことができ、その間は強制送還はできず(いわゆる送還停止効)、彼は稼働を続けることができたはずだ。

そのような「人道的取り扱い」が(特に東南アジア諸国で)知られるにつけ難民申請者は毎年50%ずつ増加し、2017年には2万人近くになった。難民制度が申請者と雇用事業所により「活用」され、労働者受け入れ制度になってしまったのだ。

そういう「水増しされた」難民申請者数を母数として計算し、「難民認定率1%以下」だと喧伝するのは意味がないし、そんな「認定率」を見たら本当の難民は当然日本に来なくなる。来るのは「働きたい」という人で、認定を受けなくても全然かまわない者が大半になる。分母と分子が何を表すかを無視して得られた数字を使うのは政治的であり、かつ難民の「日本素通り」を誘発する点で逆効果だ。

2018年以降、そのような不合理な手続きは是正され、現在なら、「働きたいから」といった難民条約とは無関係な理由で難民申請をしたら、難民性審査に入る前にそもそも在留を認められない。難民申請が5000人ぐらいまで減って来た理由の一つは、難民制度の正常化にある。特定技能というフロントドアからの外国人労働者受け入れ制度の開始も一つの理由かもしれない。

他方で、ミャンマーのオリンピックサッカー選手ピエ・リアン・アウン君の場合は、国軍のクーデターに反対するという「政治的意見」をアピールした上での典型的な「政治亡命」ケースだ。彼が難民として認めらなかったら世界中から非難轟轟(ごうごう)だろう。ただ、悩んだ上でルビコン川を渡った彼だが、予想されたように残された家族への国軍の圧力があり、悩みは深いようだ。

こういうケースはオリンピックなどでは時々ある。2016年のブラジル・リオのオリンピックパラリンピックでは、エチオピアの陸上競技選手2人が政府の弾圧に抗議して腕を交差するポーズをとって注目を集めた。

選手にとっては命に係わる危険な行為だし、出身国政府にとっては国内の問題をさらけ出す頭の痛い問題だ。開催国にとってもどう対応すべきか微妙な問題だ。だから、オリンピック委員会は選手の政治的な行動を禁止するのだが、今ではオリンピック自体が国威発揚や国民意識の強化といったきわめて政治的(そしてIOCの経済利権的)な目的のために開催されているから、選手に対する禁止令にはまったく道義的な説得力がない。こういうケースはオリンピックを開くことのコストの一つで、今後も出てくるだろう。

ウガンダは、北部を中心に長年に亘り紛争が続き、国内避難民がおり、同時に多数の難民が流入している。ウガンダが受け入れている難民の数は、南スーダンや今後民主共和国などから150万人に上る。また難民に就労を認めたり、経済活動を許すなど、先進的な難民政策で知られている。難民問題からするとごく重要な国。

しかし今回の事件はそういうこととは無関係で、貧困問題、「経済難民」問題と考えた方が分かりやすい。彼に難民申請をするよう勧める向きもあったようだが、それは難民制度の誤用濫用を促進し、制度に対する信用をさらに毀損する無責任な行為だ。

今回はお騒がせ事件に終わるが、ほとんど知られないウガンダという国の貧困(や難民問題)に注目が集まったのは良いことかも知れない。

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