全権を掌握したタリバンは融和のポーズを見せるが、カブールのタリバンの言うことを地方のタリバン勢力が守る保証はない。今日のタリバンが言うことを明日のタリバンが守るとは限らない。タリバンは一枚岩ではなく、激しい迫害(特に女性や少数民族ハザラ人に対して)が続く可能性が残る。
55万人の国内避難民がいるアフガン国内からは、「日本に助けてほしい」という声が上がっているという。問題は、難民認定に関して言えば、日本まで自力か誰かの助けでたどり着かない限り難民申請をできないことだ。パスポート、ビザ、旅費の工面以外に、カブールの空港まで行けないなど、出国の手段すら限られている。外務省は19日、日本大使館やJICAで働いた人々について出国支援措置を取ると発表した。いいことだ。
アフガニスタンの外では、周辺国に200万人もの難民がいて何十年も不安定な生活をしている。日本までたどり着ける難民は少ないが、希望する特に脆弱な難民(女性や子供)を、政府が救いだす形の「難民第三国定住事業」の対象は昨年から「アジア諸国に住む難民」と拡大されている。アフガン難民も制度上は対象になるが、現状では選考はマレーシアでのみ行われるから実際的には応募が困難だ。外務省・内閣府はパキスタンなどでの募集を考えるべきだろう。
日本に幸いたどりついて難民と認められた者のほかに、難民申請中で何年も結果を待つ者や、難民不認定で収容後に仮放免となった者がいる。アフガニスタンにおける客観的情勢が激変した以上は、入管庁はこれらの案件についても策定中の「難民認定ガイドライン」に従って見直すべきだろう。アフガン難民申請者は「人種、宗教、国籍、特定の社会集団、政治的意見」という迫害の理由の多くを満たすのではないか。そうでなくとも「補完的保護」の対象になるだろう。新たな申請は優先的に処理すべきだ。また、二月のクーデター後に在日ミャンマー人に対して特別措置を取ったように、在日アフガン人に対しても特別措置を取るべきだろう。UNHCRも、難民不認定者についても現状ではアフガンへの送還は避けるべきだとアドバイスしている。
日本は過去20年にアフガン支援に7000億円も費やし、それはそれで意義があったが、いま必要なのは、タリバンを恐れて逃げたい人や、帰国を恐れている人たちを少しでも多く救うことだ。
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