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アフガン人救出作戦と道義的責任

 某テレビ局が、タリバンが制圧したアフガニスタンから救出した人々をどのように受け入れているかについて番組を作っているという。アメリカは10数万人、イギリスやカナダなどが自国を助けた人々を2万人ぐらい受け入れる。日本は500人を受け入れる。

 ただ、ドラマティックな救出作戦のその後の報道は、より大きな文脈の中でされるべきだ。例えば、隣国イランは350万人のアフガン難民・移民を40年にもわたって受け入れている。日本では年に数十人の難民受け入れでも「治安が乱れる」などという声があるが、イランの受けて来た重圧は途方もない。しかし、西側諸国はイランへの経済制裁を続けるだけでなく、イランのアフガン難民に対する人道支援もしない。

 イランとすれば、西側諸国が主導したアフガン戦争の被害者である多数のアフガン難民を受け入れる社会的・経済的・政治的コストは膨大なのに、西側諸国が負担分担をしないことには腹が立つだろう。欧米諸国は、多数の難民の存在によってイランの政権に重圧がかかることを期待するわけだ。「難民の政治的利用」であり、中東難民を西欧諸国に意図的に送り込んで混乱させようとしていると伝えられるベラルーシと大差ない。

 十分な支援を受けられないアフガン難民が一番の犠牲者だが、パキスタンにも140万人ぐらいのアフガン難民が、支援もほとんどないまま苦しい生活を数十年送る。イランと同じく、アフガン難民について国際的支援を受けられない貧しいパキスタンが、難民に対して十分な支援をしないからと言って、どの国がパキスタン政府を責めることができよう。

 加えて、アメリカの圧力のもとIMFなど金融機関はアフガニスタンの在外資産1兆円を凍結していて、タリバンは200万人の国内避難民などへの支援もできない。ユニセフなどによるとアフガンの子供たち100万人もが冬を迎えて命の危険に晒されている。国連機関やケア・インターナショナルなどの国際NGOが最低限の人道支援を続けるが、集まる援助資金は数百億円で圧倒的に足りない。タリバンは自国資産の凍結解除を求めているが、アメリカはそれを許さない。アフガンの国内避難民の苦境をタリバン弱体化のために政治利用しようとしているからだ。

 付け加えれば、アメリカはUNHCRの予算の三分の一(年間1500億円ほど)を負担し、難民も毎年10万人以上受け入れている。しかし、中東難民を見ればわかるように、難民の多くはアメリカの政策の結果から生まれている。アメリカが難民救済をするのは当然の道義的責任だし、その費用はアメリカが20年間のアフガン戦争に使った220兆円に比べたら微々たるものだ。膨大な数の難民を生み出しながら、その一部だけを支援するのは偽善的でもある。

 アメリカの政治家が地政学的観点から戦争を始め、アメリカ軍(と同盟軍)が数十万人を殺して国家を壊し、周辺の途上国は流入する多数の難民に悩み、国際人道機関は難民の命を救うための資金不足を嘆く…。これは過去20年アフガニスタンやイラクで繰り返されてきた構図だ。

 欧米メディアはタリバンを悪魔化してすべての責任を押し付ける傾向があるが、欧米諸国、特にアメリカの道義的責任をもっと追及すべきだろう。

 日本は、アフガン戦争に直接参戦したりせず、アフガンでの復興・人道支援に7000億円を拠出し、NGOが現地で活躍し、今回は500人を国内に受け入れる。それで助けられたアフガン人は何十万、何百万人といる。今までの日本の支援についてはもっと評価されてしかるべきだろう。

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