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「難民認定ガイドライン」(難民該当性判断の手引き)の公表

2014年の「難民認定制度にかかる専門部会」の4つの提言の一つである「難民認定の判断要素の明確化」(難民認定ガイドライン)がようやく策定・公表された。27ページのもので、審査時の留意点が詳細に記されている。

 いわゆる「難民認定基準」の整理と公表であり、この先日本で難民申請をしようとする者にとっては(また現に難民申請をしている者にとっても)、日本ではどのような点が重視されるのか、自分が難民認定される見込みはどうか、についての判断に役立つ。もちろん難民支援団体にとっても役立つ。

 どういう点が判断基準になるか分からない、つまり認定基準が不透明なら、「どのみち結果は分からないのなら申請してみよう」といった日和見的な申請を誘発する。2018年までは、難民申請をすれば自動的に就労許可が出たからなおさらだ。他方で、自分が難民であると信じる者は、どう転ぶか分からない日本で申請するより、基準がはっきりしている国で申請する。

 入管庁は「認定範囲を広げるものではない」としているようだが、①「迫害」の定義に、今までの「生命、身体または自由の侵害又は抑圧」に加えて、「その他の重大な人権の侵害や差別的措置、例えば生活手段のはく奪や精神に対する暴力」が明記されたこと、②「迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖」の判断に際して、申請者が必ずしも個別に把握されている必要はない、必ずしも指導的な立場にある必要はない、武力紛争が発生している地域に帰国することは十分に理由のある恐怖を強め得る、などと述べられていること、③5つの迫害理由の一つである「特定の社会集団の構成員であること」に関して「性的マイノリティ」や「ジェンダーによる差別的取扱い」が詳細に述べられていること、などからは「判断基準の緩和」が見られ、それは結果的に「認定範囲を広げる」ことになるだろう。

 今回の「ガイドライン」は、一義的には難民認定を巡る透明性と説明責任の求めに応えて策定・公開されたが、「ガイドライン」は日本の難民認定制度の根幹の一部だ。地方局も含めた120名にのぼる難民審査官がそれに従って審査をするなら、その弾力性によるプラスの影響(乱用者の減少と認定者の増加、つまり難民性の高い申請者の比率の増大)がこれから出てくるだろう。

 そのような申請が減り、救済されるべき者が早期に救われるなら、結果的に収容・送還される者も減る。入管法改正の議論では、「川下」の収容・送還だけでなく、「川上」の難民認定問題にもっと焦点を当てるべきだ。とまれ今後はさまざまな事例に適用して順次改定を加え、このガイドラインを living document にすることが必要だ。

 重要な点だが、「ガイドライン」は、今国会で審議される入管法改正案にある「補完的保護対象者」の認定に直接影響する。「補完的保護対象者」の認定にも「迫害を受けるおそれ」が要件とされるからだ。

 「ガイドラインは」日本の過去の事例・判例だけでなく、欧米諸国のガイドラインや判例、UNHCRの難民認定ハンドブックなども参考にして策定されているから、難民認定を巡る国際的潮流をも反映しているはずだから、難民制度の研究者にとっても興味深い。

 最後に、これはアジアでは初の公開「難民認定ガイドライン」であり、2010年に日本が始めた難民の第三国定住を受けて韓国が同様な事業を始めたように、アジア諸国でのガイドラインの策定を後押しするかもしれない。

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